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「お兄ちゃん起きてー」
珍しく妹に起こされた俺は今日が何の日であるかを思い出した。
父親と母親、そして妹が旅行に行く日だった。
所謂、家族旅行というやつだ。
父曰く、まとまったお金が手に入ったらしい。
しがない商人である親父のことだから何か多額のものが売れたのだろう。
家族旅行に俺が含まれていないのは、家族からハブられている訳ではない、はずだ。
家族で旅行なんて歳でもない俺は
「俺の事は良いから楽しんできなよ」
と、当たり障りもなく断りをいれていたのだ。
「お前ならそう言ってくれると思ってた」
満面の笑みでお礼を言った親父に、どうせあまり稼げなかったのだろうと思い親孝行も兼ねて留守を任せられることにしたのだった。
どうせ留守番なのだ、二度寝でもしようかと布団を被り直したが、もしかしたら何か良からぬ事故が起きてしまい今日が家族と過ごす最後の日かもしれない。
そう思ったので布団から出て食卓へと向かった。
決して妹の右手に持たれている木刀に怯えた訳ではない。
朝食は珍しく豪華だった。
起きてきて正解だったな。
そういえば何日間旅行に行くのかを聞いていなかったと思い質問してみると1週間は行ってくるとのことだった。
これは予想以上に収入があったな。
「お父様」
お金を強請ることにした。
ケチな親父にしてはすんなりと小遣いをくれた。
予想以上な額をくれたので少し気味が悪かったが、
1週間分の生活費だろうと思い貰っておくことにした。
一応、お礼を言っておくと
「良いだよ」
と、今まで見たことのない優しい笑顔で答えてきた。だいぶ気味が悪かった。
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