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馬車の窓から外を見つめる。
これはマズいことになった。
確かに俺は魔法が使える。
だが、使えるだけなのだ。
火を出したり、水を凍らせたりすることはできるが、それだけなのだ。
戦うなんて以ての外だ。
それ以前に問題がある。
親父は、いや、家族は俺を売ったのだと。
俺が悲しい眼差しで外を見つめていると
「故郷のことを思い出してるのかい?」
男に訪ねられた俺は返事をする。
「家族のことをね」
必ず復讐してやると。
馬車のスピードが遅くなってきたので、窓からの逃亡を図ろうとしたところで
「着いたよ」
と言われてしまった。
「王都はまだ先のはずじゃ?」
「もう1人迎えにきたのさ。彼女は魔法学校の生徒でね。訳あって卒業を早めて軍に所属することになったんだよ」
なるほど、女子高生というわけか。
俺は座席に座り直し待つことにした。
待つこと数分、男とともに女は入ってきた。
この時まで俺は田舎育ちであるせいか佳麗だとか上品な美しさというものが分からないでいたが、その女を見て佳麗と形容できることはすぐに分かった。
赤みがかった茶髪は腰の辺りまで伸びていて背はさほど高くなく、若干、垂れ気味である大きな瞳が上品な顔立ちに子供っぽさを醸し出していた。
そして制服だ。
そして彼女は、俺を見ると微笑んでこう言った。
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