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「お山を早く越えましょう。こんな所で油を売っている場合ではございませぬ」
山道で一人の浪人がうつ伏せで倒れていた。灰色の着物を着た細身の男だった。
その隣りで桃色の着物を着た小さな女の子が、浪人を起こそうと試行錯誤していたが浪人は一向に起きる気配はなかった。
大福の様に真っ白で、ぷっくらと美味しそうな頬をした女の子だった。
二つの御団子を乗せたような髪の女の子は、頬をさらにプクッと膨らますと腕組みして言った。
「武士はくわねど高楊枝でございましょう、そんな事ではお侍さまの名が廃りまする」
そう言うと、小さな着物の袖から竹筒と葉っぱに包まれた何かを取り出した。
「コレはわたくしの”へそくり”でございまする。コレでも食べて早く進みましょう」
そう言うと、竹筒の水筒の蓋を開け、葉っぱを剥き中からおにぎりを取り出した。
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