第1章

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花の形みたいな模様があしらわられた木の扉(組子障子というらしい、母さんが教えてくれた)を開けると、3人で、お~!っと声を上げてしまった。 畳が敷かれた和風の部屋。 12畳ぐらいある広い居間に、その少し奥には、3畳程の小部屋とガラス張りの壁の室内テラス。 濃淡緑のコントラストが美しい木々と山が一望できる。 そして、景色を眺めながら入れる大理石の露天風呂が目の前に広がっていた。 3人でまず真っ先にテラス席に向かう。 両親は木の机を挟んで、向かい合わせの肘掛け付ソファに座り景色を堪能する。 景色を独り占めしてるみたい!贅沢ね~、と母さんは両手で肘掛けをリズミカルに叩いている。 少し子供っぽい母さんを見て、笑いそうになった。 その後は、露天風呂に。 お湯の温度や触りごこちを確かめる。 父さんは、突然景色に向かって、ヤッホー!と叫んだ。 もう、子供みたいなことして、と母さんが父さんをたしなめる。 俺はおかしくて笑ってしまった。 部屋の探索がひとしきり終わった後、部屋にある備え付けのお茶を3人で飲んでいた。 父さんはビールが飲みたいと言ってたが、夕ご飯までがまんしなさいと、母さんに言われて残念そうにしていた。 同じ場所でゆっくり過ごす時間は久しぶりだ。 「ゆうちゃん、ほんとありがとね、こんな別荘みたいなとこ、あっ、佑介だったわね」 「あ~、良いよ別に。実家での呼び名で。実家みたいにくつろいでもらいたいし」 「こんな立派じゃないけどね~」 「おいおい、ここと比べるなよ」 それもそうね、母さんの言葉に3人で笑った。
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