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(あと少し…頑張らなきゃ。)
涙を強引に拭い、先生の方に向き直った。
「先生、短い間だったけど、お世話になりました…!!失礼しました。」
軽く会釈をすると、次の言葉も待たずに教室を飛び出す。
ぴしゃり、と冷たい音を放っていた。
「立花さん…!!」
教室を出た私は、一刻も早く立ち去りたくて、全力疾走の体勢だった。
ところが、走りきらないうちに、呼び止められてしまう。
先生の声だった。人気が全くないため、よく響く。切羽詰まったその声に、私は恐る恐る立ち止まる。
緊張感が背中を伝う。何を言われるか、恐かった。それでもにげなかったのは、微かな期待があったからかもしれない。
近づく足音に合わせて、振り返ると、先生はすでに私の目の前まで来ていた。
肩で息を切らしているのを見て、慌て追いかけたのが分かる。
ドキドキと高鳴る心臓を抑え、何も言わずに先生を見上げた。
先生は、呼吸を整えると、乱れた髪をかきあげ、口を開いた。
「立花さん…今まで、ごめんなさい。」
「え…。」
「私…あなたが、苛められていたこと、何となく気づいていたわ。なのに、見て見ぬふりをしていた。正直、めんどくさくて、関わりたくなかったの。さっきまでも、そう思っていたわ。」
「……はい。分かって…いました。」
拳を握りしめ、俯く。それは、私にも伝わっていた。だから、誰にも相談できずに、苦しむことになった。
どうせ助けてくれない。そう、思って。
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