ごめんね、そして…

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「美琴ー!!引っ越しのトラック来たわよー!!」 一階の方から、ママの声が響いてくる。 私の部屋まで聞こえるというのは、すごく声を張っているのだろう。 「ご、ごめーん!!もうちょっとで終わるからー!!」 私も負けないくらい声を張り上げると、段ボールにガムテープを貼った。 (よし…これで最後。) 大して重くもない段ボールを持ち上げると、部屋をぐるっと見渡した。 「この部屋も、これで最後か。」 少しの寂しさを抱えながら、感傷に浸る。 家具一つなくなり、すっきりした何もない空間。 そんな中、床に紙切れが落ちていることに気づいた。 「いっけない!!捨てるの忘れてた…!!」 慌て拾い上げ、じっとそれを見つめる。 それは、新聞の切り抜きだった。そこには、大きなタイトルで『いじめは存在した。○○中学校生徒無差別傷害事件。元担任語る。「気づいていながら見てみぬ振りをしていた私も同罪」』と記されている。 「……ちゃんと、口先だけじゃなかったんだね。」 私は微かに微笑むと、くしゃくしゃ、と丸め、階段を降りていった。
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