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外に出ると、ママが誰かと話してるのが見えた。その人物は、トラックに隠れていて、見えない。
(誰だろ…?パパは、お仕事だからあとから来るって言ってたし…近所の人に挨拶でもしてるのかな…?)
不思議に思いながら、近づいていく。すると、私の足音に気づいたママが、手を振って笑いかけてきた。
「あら、美琴。遅かったじゃない。せっかくお友達が見送りに来てくれたのに。」
「お友…だち…?」
その響きを不振に思い、首を傾げる。
友達と呼べる存在なんて私にはいない。
警戒しながら、歩いていく。もしかしたら私を苛めていた子が、友達だと偽って最後に嫌がらせをしに来たのかもしれない。
その可能性を否定できなかった。
「嫌だわ、そんな恐る恐る来て、どうしたの?ほら――夏恋ちゃんよ。」
「え…」
懐かしい名前が耳をくすぐったのと同時に、その人物の姿が視界に入る。
――ドクン――
心臓が小さく、跳ね上がった。相変わらず、ゆるくふわふわした、長い髪に、リスみたいな大きな瞳。
前と違うのは、それを肩で2つに結び、可愛らしいリボンでまとめていたこと。
昔の面影はありつつ、少しだけ大人びた、落ち着いた雰囲気が漂っていた。
(夏…恋…?どうして…)
戸惑う気持ちを隠せないまま、その場で固まる私。
夏恋も、言葉を発しないで俯いている。
そんな気まずい沈黙を打ち破ったのは、ママだった。
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