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「あら、どうしたの二人とも!!久しぶりだから緊張してるのかしら。ほんとに久しぶりね、夏恋ちゃん!!中学離れちゃったからなかなか遊べなくなっちゃって残念だわ。今どうしてるの?よかったら、引っ越したあとも美琴と遊んでちょうだ…」
「ママっ!!あの…ごめんね?ちょっと…夏恋…ちゃんと、二人っきりにしてもらってもいいかな…?」
気がつけば、私はママの言葉を遮っていた。何を言っているんだろうか。
過去に色々あった人間と二人っきりなんて、恐いはずなのに。
…いや、答えはもう分かっていた。
きっと夏恋も同じ気持ちなんだと、何故かはっきり分かった。
ママは、少し不満そうにしたが、やがて何かを察したのか、ふ、と小さく笑った。
「…分かったわ。最後だものね。じゃあ、終わったら呼んでちょうだい。ママ、ご近所の人に挨拶回りしてくるから。」
「…ありがと」
そう言うと、ママは、姿を消した。あとには、再び沈黙が流れる。
(このままじゃ駄目だ…。せっかく夏恋の方から会いに来てくれたのに。…よし。)
私は、思いきって口を開く。
「あの…久…し…ぶり。どう…したの…?」
何とか振り絞った声は、途切れ途切れで、か細かった。
夏恋は私と目を合わせようとせず、制服のすそを握りしめたまま、地面を見つめていた。
「美琴ちゃんが…引っ越すって聞いて…あの…ニュース、見た。大変だったね…。」
「う…ん。でも、もう落ち着いたから…平気。」
「そっか…」
「「…………」」
再び気まずさに襲われた。俯いたまま、ひたすら自分の足元を見ることしかできない。
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