134人が本棚に入れています
本棚に追加
正直、苦痛でしかない空間だった。こうなることくらい分かっていたはずなのに
どうして私は…
嫌な沈黙が流れる中、夏恋の表情を見ることすら出来ず、硬直する。
金縛りにあったみたいに動けなかった。しかし、やがて気まずさよりも、早くこの空気から抜け出したい気持ちの方が大きくなっていく。
どうせ、もう会うことはないんだから、思いきって自分の気持ち伝えればいいのでは?
(…名前も知らない、誰か。私にもう一度だけ…勇気をください。)
私の声に答えるかのように、すっと心が軽くなった。
考えるより先に、身体が動いていた。
「「あの時はごめっ……!!」」
――ゴッチーン!!――
2つの声がが綺麗に重なった瞬間、ものすごい鈍い音と共に、痛みが頭を駆けめぐった。
その痛みは頭だけでは満足しないで、徐々に全身に渡っていく。
ビリビリと、電流のように流れていく。
「っ…~っ!!」
声にならない声をあげながら、頭を抑えて目を見開く。
目の前に、星が舞っているのが分かった。真っ先に視界に飛び込んだのは、私と全く同じ行動をとっている夏恋の姿だった。
すぐに、お互いの頭がぶつかったことを理解した。
最初のコメントを投稿しよう!