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やがて、夏恋の目がぱちくりと瞬きを繰り返す。
そんな夏恋の様子を見ていたら、痛みが段々と引いてきた。
そして――
「……っぷ…あはっ…あははは!!」
思わず、吹き出してしまった。あまりにも夏恋の表情が面白くて、同じ行動をとったことが、可笑しくて、気まずい雰囲気なんてすっかり忘れて、お腹を抱えて笑ってしまった。
すると夏恋の顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。
「み、美琴ちゃっ…笑うなんてひどっ…」
「ご、ごめんね…だって…夏恋がすっごく間抜けな表情だったから…あはは!!」
昔のように呼んでる自分にも気づかず、笑う。
そんな私に、夏恋もつられるように、口元をつり上げていった。
「そんなはっきり言わなくても…っく…あはは!!」
「「あはははははっ!!」」
二人の笑い声が綺麗に重なり、晴天の青空いっぱいに広がる。
その声に合わせて、太陽もキラキラと輝きを増していく。
まるで合唱のようだ。
「あっはは…ふぅ。」
「くすくす…はぁ…。」
一通り、笑い転げると、やがて再び沈黙に支配される。だけど、さっきのような気まずさはすっかり振り払われていた。
考えるより先に、口が動いていた。
「…すごいね。二人して同じことするなんて、やっぱり私たち…親友だったんだね。」
「…うん。」
さらさら、と草木が風になびく。しんみりとした空気に包まれた。
――親友だった――それはもう、私たちが元に戻れないことを意味していた。
私は分かっていて、あえて口に出した。前に進むためにも。
夏恋は、寂しそうに笑って、口を開いた。
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