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Naked Moon 朔
『Deserter』
第一章 星が降る
惑星MHZ28(通称オウランド)、各種企業の研究所と、学園から成り立つ星だが、地下鉱物資源が豊富で、人は豊かに暮らしていた。
そこで、からくり屋を営む、成田 政宗(なりた まさむね)は、オウランドの中央システム、ユカラから面倒な依頼を受けた。
ユカラは名目上、人間の介入を必要としない、独立したシステムであった。故に、公正で中立を保つ、ということになっている。
「政宗、最近、暇でさ。フォールに行って、そこのメインコンピュータと、将棋とチェスの対戦できるようにしてきて」
対戦とは何だ?と、政宗はユカラのある暗闇を見た。中央システム、ユカラは機械のみの存在のため、光を必要としていない。
上も暗闇、下も暗闇の中で、政宗は足場を組みユカラを見続けている。ユカラ、その中に、人間の脳だけの存在が幾体か存在し、システムとして稼働していた。その脳は、政宗の友人となっていて、時々、通信で用は済みそうなものなのに、呼び出しをする。
「…真夜中の二時に緊急で呼びだした理由は、まさかそれではないよな?」
緊急、システムが止まりそうだと連絡が入った。
「夜だったか、ごめんな。これが緊急の用件。暇で死にそうだ」
ユカラまで、政宗は車で走り、システムまで階段で移動となっていた。ここは、地上四十階程度、そこまで階段はまだいいほうで、ロッククライミングにもなっていた。システムは人間の介入を必要としない、と、名目上なっているので、通路もない。
政宗に、言葉は聴こえるが、脳の存在は見えることはない。
「…帰る」
現場に付いてから、足場を組み、各種の点検もした。
「待って、政宗!脳はな、刺激がないと、永遠の眠りになるのだよ。頼む!」
声色は必死で、政宗が開けようとしたドアは開かなかった。
「監禁か?ここを、壊してもいいぞ…」
政宗の声色が下がる。
「待った、待った、待った!」
ユカラは、新たな条件を出してきた。
からくり屋、機械の再利用に伴う、各種の誤動作の調整を行うことを生業としている。政宗の相棒の、茶屋町 一樹(ちゃやまち かずき)とは、軍部からの友人で同じ年であった。
「…ユカラが、紗知(さち)を生存と書き換えていいと、言ってきた」
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