第1章

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 茶屋町は車に乗せた、ここまで良い。 「俺の迎えよりも、先に病院に行ってね」  政宗をその怪我人を乗せたまま、迎えに来ていた。 「政宗も目を離すと、何をするのか分からないしね」  病院に連れてゆくと、診察で大怪我であったということが分かった。その怪我は、最近のものではなく、過去からの積み重ねであった。 「…虐待か?」  少年と思った男は、成人男性であった。しかも、ミラレスの出身者で、実験体だと分かった。  病院の入院施設のベッドで、全身二十箇所の骨が折れている青年は、そこに座って話していた。 「いえ、フォールの選手なのです」  フォールの選手、惑星フォールはカジノの星で、そこでは日々賭け事が繰り広げられていた。そこで大人気のスポーツが、星の名前を取りフォールと呼ばれていた。 「それで、こんなに怪我が多いのか…」  フォールの競技で、最近、フェイクゴーストが多発し、事故になっているのだそうだ。そこで、ユカラにいい腕の職人が居ると聞いて訪ねてきたらしい。  又、フォールか。政宗は、黙って話を聞いていた。 「仲間が死んで、もう、誰も死なせたくない…」  政宗が、ふと共感してしまっていた。青年の顔をじっと見つめる。仲間を死なせたくないから、重体なのにここに来たというのか。 「もう眠りなよ」 「いえ、俺、横になったら、多分、もう目覚めることができません…」  ミラレスとしても、限界なのだそうだ。政宗は、左目に付けていた機械を、そっと取ると生体型の目に切り替えた。 「……貴方、天然体なのですか」  ミラレスの実験体は、天然体を至上の存在と認識する。絶対に守らねばならぬもの。 「俺の弟が、治療する。治せ」  天然体は、実験体にとって至上の存在であった。それが命令し、治すと言えば、断ることができない。 「はい」  政宗の弟は、今、ユカラの研究所に勤務していた。生体医学には詳しいので、どうにかはしてくれるだろう。 「あの、もしかして、貴方達がからくり屋なのですか?」  噂で流れていた、ユカラでは天然体が護衛も付けずに生活し、しかも、危険な仕事までしていると。しかも、凄腕の機械の修理屋であるとも。 「お願いします、フォールの仲間を助けてください!」  重体に、土下座されてしまった政宗は、何度も頷いてしまっていた。
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