第1章

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 つくづく甘いと思うが、政宗は弟の上原 義経(うえはら よしつね)を訪ねていた。茶屋町は、家が心配なので先に帰って貰っている。政宗は、上原の家で資料を読んでいた。 「政宗、怪我人を俺に押し付けて、フォールに行くつもりなのか?」  上原は、ワインを取り出すと、勢いよく飲んでいた。 「ユカラからの依頼もあってね。行くつもりではあったのだけれど…」  上原に台所を指差されて、政宗はフォールの資料をテーブルに置くと、料理を作りだした。 「パスタでいいか?」  上原が頷く。政宗のパスタは凄くおいしい。 「まあ、いいよ。時宗と怪我人だな。面倒を見よう。けれど、条件付き」  政宗の家に、上原の部屋を作ること。それが条件であった。どう建て増しするのかが、考えどころではあるが、敷地は広い。 「別棟でもいいか?」 「構わないよ」  別棟ならば、ちゃんとした家が建てられる。 「了解した」  しかし、ユカラに申請すると、あっさり却下された。保護の関係上、天然体の二人は、同じ敷地内に住むことができないそうだ。 「ユカラが…ダメだって、上原」  パスタを食べる上原は、ちらりと政宗を見た。 「…では、他の条件を出すよ」  政宗の左目のメンテは、今後、上原が行うということ。 「メンテなんて、していないけどね…」  その大雑把なところが、上原が嫌なのだそうだ。 「ちゃんと、治療する」  無いものを治療できないだろうと、政宗は思うが、そういう問題ではないらしい。 「分かった」  政宗が、上原の家を出て、家に帰ろうとしていると、茶屋町が迎えに来ていた。 「時宗が心配してね」  政宗は、家に残している時宗の方が心配であった。 「やはり、もう一人、大人の同居人が必要だよね…」  政宗の妻、詩織はテロの爆破で、脳だけの存在になっている。茶屋町の妻の紗知も居なくなってしまった。  政宗はミラレスの天然体で、誘拐の危機には常にさらされている。天然体は、高値で取引対象でもあるからだ。  ユカラのビルを抜けると、住宅街が広がる。住宅街を抜けると、そこは不毛の大地であった。  抜けるような星空が、一面に広がっている。 「まあ、俺が、からくり屋だけしていれば、問題ないのだけれどね」  どうして、からくり屋だけにならないのかは、不思議であった。 「そうだねえ」  茶屋町は、家の前で車を止めた。時宗が、家から飛び出してくると、政宗の無事を確認する。
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