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『藤永さんじゃないなら松本さんが持ってる…って事?ううん…聞けない』
美和は両頬に手を当て赤くなる顔の火照り(ほてり)を隠そうとしたが。
『初ねぇ、今どきやっちゃってる女子高生は多くなってきてるっていうのに。
でもこういう反応が漫画にはネタにしやすいキャラクターなんだけど。
あら、帰るの?』
『藤永さんの仕事の邪魔になっちゃうから』
落ち着かない!
美和は両親から松本の部屋の鍵を借りておけばよかったと後悔したが、ミロが待つ家へと歩いていた。
フッと思い出し【描いてね】と頼まれていた松本の2等身イラストを描く事にし顔の火照りをしずめようとする。
『ミロ、松本さんの髪は柔らかくて茶色なの。
女の人みたいに指が繊細できれいな手をしてるんだよ。わかる?
ミロも2回松本さんに抱っこされているよ』
リビングの椅子に座る美和の足元でスリスリしているミロが聞いているかはわからないけど。
『《美和を離せ》って怒った顔も、優しく見おろしてくる目もステキなんだよ。ミロったらスリスリしないで聞いてよぅ』
2時間ばかりでイラストは仕上げたが顔の火照りはなおらなかった。
早めの夕食後、昨夜松本からのお土産だと手渡されたクッキーを食べながら話をしていた。
『帰るのは今日だと聞いていたが昨夜ホテル…空いてなかったのか?』
『ううん、K出版社は用意しようとしてくれたみたいだけど。
私を早く帰らせてあげたかったらしいの』
『松本さんらしいな』
『お父さん…』
そういう気づかいを松本らしいとわかってくれている事が美和には嬉しくて!
『松本さんが美和の兄貴だったら、寂しい思いさせなくて良かったかもな』
『お父さんっ、松本さんに失礼よ。兄貴だったらなんて』
『そうか?フッと思っただけなんだ』
お父さん…松本さんを兄貴だったらなんて言わないで…
だって兄だったら好き以外はタブーだもの…
『お父さんがね、サイン会の新聞記事を切り抜きしているのよ』
『えっ!?新聞?』
それは記事と写真合わせて手のひらくらいの大きさだったが、2枚ともに横一列に並んだ様子・藤永のサインの様子が写っていた。
【どこにこんなスタミナが!?1日500人と握手にサイン!人気漫画家奮闘中!】
『このクッキーやっぱりあの御用達の?』
松本さん…
この箱を何処かで見た事あると思っていたの…
高いっていう御用達クッキーを私達に?
3時間の運転、お土産クッキー…優しさが伝わる!
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