ケーキ屋と上司の裏の顔

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「労務の有馬か?」 なんてこったい。 我らの出世頭は、違う課の一般社員まで覚えておられるとは。 「そうです、人事労務管理部労務課の有馬梢です。神蔵課長」 「課長って言うのは止めてくれないか」 ....なんでだよ! 「会社にいるみたいで、落ち着かん」 今、コイツ私の心を読んだな。 確実に読んだよ、恐ろしい。 「ところで、神蔵さんはどうしてここに?」 「決まっているだろ、ベリーアイスシューを買う為だ」 誰が食べるの? 「むろん、俺だ」 また、人の心読んだ。 絶対、妖怪の覚だよ。 それか、読心術の心得あるよ。 「お前、ベリーアイスシューの最後の一個を買ったよな」 嘘をついてもバレるので、おとなしく頷く。 「そこでだ。 そのシュークリームを半分くれないか?」 なんで、その結論に落ち着く。 「嫌です」 イケメンだからといって、私は堕ちない。 このシューは私のものだ! 「これでもか?」 そう言って、神蔵さんは持っていた包みを私にみせた。 はっ、それは! 「椿堂のわらび餅。 お前が、半分くれるならこれを分けてやるが」 その案、乗った。 数分前の決意はどこへやら。 私は、お菓子によって堕とされた。
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