第1章

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「ほとんど村田が事態を掌握してるジャン。どーなってンだおい、シッチャカメッチャカのアメリカの捜査当局! 何か言え、FBIとCIA!! 専門家の二人!!」 『テロ事件は、常に入念に計画を立てているテロリストの方が主導権を握る』とアレックス。その後セシルもサクラに対し文句を続けた。 『シッチャカメッチャカにしている元凶のサクラが文句をいう資格はありません! 何で核兵器を捨てるンですか!? 何で拓さんに情報が行っていないンですか? それで村田に踊らされる事になったンじゃないですか!』  このツッコミだけはサクラもいい返答はできない。「目を離していた隙に捨てられた」なんて間抜けな話、セシルだけならともかく、アレックスには絶対知られたくない。 「……ま、過ぎた事はいいや。これからどうするか、だなー」  受話器の向こうで、アレックスの溜息だけが聞こえた。 ……変わらず陰気でわけわからん奴め…… と、自分のことを棚にあげ心の中で悪態をつくサクラ。 『もうじき高遠さんが着くと思いますが見えませんか?』 「んーーー? うん。ボートの音は聞こえる。だけどボートは見えない。この<煉獄>は入江で外はわかんないからねぇ」  サクラは聴力も超人的だ。軍用ボートのモーター音が、南東方向から徐々に近づいてくるようだ。もうそう遠くない。  正直、涼はあのまま<ニンジャホーム>に置いておきたかったし、多分サクラの判断では反ロシア・テロリストも<ニンジャホーム>に攻める可能性は少ないし、閉じこもる手があったとサクラは思っているが、セシルの判断も間違いではない、とも思っている。 「あのクソCIAの反逆者は、信用できるンカイ? 同業者よ」 『私はダブル・スパイでもなければ任務にも忠実です。ピート=ワイスのことは大丈夫でしょう、転身したといってもこの業界人です。ミスが発覚した以上、消されるか保護下で刑務所にいるかしかもうないので安心して使ってください。高遠さんのほうは大丈夫、落ち着きました』 「変な動きしたら射殺するからな! 今後の計画だけど……」 その時、湾内に米軍用ボートが入ってきた。涼と、モーターエンジンを操作するピート=ワイスが乗っていた。サクラは一瞥すると、再び電話の対応に戻った。
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