第1章

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 ヒステリーに泣きじゃくる女性陣や、大声で嘆きを口にする若者たちは、拓一人では到底制御できなかった。もし、上空や周囲を飛び交う銃撃がなければ発狂して飛び出す人間もいたに違いない。  拓は今後の事もあり、核兵器が島の中にある事、今銃撃しているのはそれを奪いに来ているテロリストだという事を説明した。突然村田の口から語られれば混乱はもっと大きく、皆の拓に対する信頼感は消え、パニックは収拾がつかなくなる。結果全滅しかねない。  拓は最初にここへの帰路で片山に告げ、その後<新・煉獄>に戻り田村、島の両人に告げた。三人とも最初は言葉を疑い、次に言葉を失った。しかし唖然となるのはまだ理性があるほうで、他の生存者たちはまともに受け入れる事はできなかった。核がいかに怖く恐ろしいものかということは、日本人なら全員が子供の頃から習い、アレルギーといっていいほど過敏な反応をする事は、日本の教員免許を持っている拓にも十分知っていた。  それでも、この事実は拓の口から言わなければ統制を執る事ができない、という事情があった。だから拓は全員を集め、現状を説明した。 「呪われているわっ!! 皆死ぬ!! 死ぬ運命なのよぉ!!」 山本がヒステリックに喚き散らし、斉藤や樺山は号泣している。他の人間たちも口々に絶望を呟き、収拾がつきそうになかった。だが拓はあえて黙っていた。今は皆を納得し冷静にさせられる事ができると思っていない。拓は片山のほうに目を向けた。片山は頷き、「静かにしろ! 重要な事を話す」と大声で一喝した。それに呼応し、女性陣は田村が、男性人は島が、それぞれ「重要な話だから落ち着いて」と言って廻った。この役を頼むためこの三人には先に話したのだ。  銃声は間断なく聞こえている状況だ。さすがに、全員すぐに拓に集中した。それを確認し、拓は村田の言った一時協力についての提案と、その代わりに日本での監視を止めるという条件を説明した。まずそれに反応したのは斉藤で、他の生存者たちも無言で顔を見合う。それは彼らにとっては一番の朗報だ。  拓は皆が何か言い出すより早く、すぐに、結論を告げる。 「俺の意見ですが、村田の要求を一先ず飲もうと思います」  拓と村田が協力し撃退する、という要求だ。これで、東京で人質になっている人間は解放され、監視も解かれる。これは拓や生存者たちに好都合なことが多い。
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