第1章

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 ゴードンだってここまでする以上、命を捨て自爆するとは思えない。何よりこの録画はゴードンが生きていることが前提だ。でなければ説得力がない。だとすれば、この録画が再生された後、ゴードンが逃げるだけの勝算があるはずだ。何より、事態がここまで進むには相当の難問、障壁をクリアーし、全てベストな状態でここに辿り着いた時を前提に発動するようになっていた村田の、最後の障壁となるのがこの録画だ。しかし、この行為は紫ノ上島の件と違い、米軍秘密施設を直接破壊するテロ行為で、ゴードンも安易に仕掛ける事はない。これはいわば、おそらく発見されないことを前提とした隠しステージだ。  セシルは同時に<ニンジャホーム>の3Dマップとその設備情報を見ている。地下20mに作られた<ニンジャホーム>は膨大な広さがありセキュリティーは最新のもので履歴が残っている。ゴードンは配備されて以来、発電施設やガソリン貯蔵庫のほうには近づいていない。彼が村田と手を組む事にしたのはほんの10日前ということがPCの履歴から判明した。  だが悪い事にこの<ニンジャホーム>の事と核兵器の詳細情報、そしてサクラと涼がやってきた事、その後の対応策、そして核兵器の誘導法などが発信されている。不思議な事に発信先はフィリピンのインターネット・サーバーで、今のところその情報にアクセスした人間は紫ノ上島の村田と思われるものだけだ。ゲーム運営者、そして<ヒュドラ>たちは日本だけでなく中国や東南アジア諸国にサーバーを持ち、そちらを利用していたはずだ。しかも僅か10分前に一度あったきりで、すでにネット上からデーターは削除されている。今、観れているのは削除前になんとか拾い上げコピーに成功したからだ。 『高遠さんは今のうちに紫ノ上島に避難してください。今ならまだ敵は<ニンジャホーム>に向かっていません』  セシルはさらに『このことをサクラに伝えてください。すぐに対策を考えて連絡します』と涼には日本語で伝え、ピートには英語で『貴方の背信行為について、協力を条件に免責を与えると司法長官とCIA長官が承認しました。貴方はそこでの指示に従う事。誓えますか』と事務的に告げた。ピートは無表情で「YES」と一言答え頷く。 『では高遠さんに武装を戻し、彼女を送り出しすぐに戻ってきなさい。武装部隊が来る前にそこにトラップを仕掛けてもらいます。急いでください』
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