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それだけで十分だった。これまでサクラたちが何をやっていたのか、全て理解した。自分に連絡になかった理由も分かる。今回ばかりはサクラを責めるわけにはいかなかったし、サクラの行動を理解もできた。
「なら話は早いですね」
「そうかな? 俺はますますお前との連帯の必要があるとは思えないけど? 追われるのはサクラだ、俺たちじゃない。お前たちだって隠れていれば済むだろう」
「サクラ君は捕まえようと思って捕まる子でないことは、捜査官が一番理解しているはずじゃないですか? 僕だって彼女を捕まえる自信はないですよ。もう、散々やられましたからね」
村田は自虐的に笑い頭を掻いた。サクラにどれだけ手痛い目を受けたか……それは敵対していた村田が一番よく知っている。
「だからこそ協力する必要があるんですよ、捜査官。いいですか? この島でヘリが着陸できる場所は限られている。今は一箇所しかない。貴方が吹き飛ばした役場前だけです」
拓は北にある役場のほう……森があって見えないが……を見た。確かにヘリが安全に着陸できる平地はあそこしかない。東館のヘリポートにはサクラが撃墜したヘリがそのまま残っているし、なんとか降りられそうな西館前は戦闘跡で生々しい状態かつ森からの攻撃には対処しようがない。着陸時の安全に不安が残るからプロならまず選ばない。倉庫側の波止場は電線が邪魔になる。そうなれば、ヘリが降りられそうな場所は役場前しかない。フォース・ルール時は電波塔と電線が邪魔だったが、今は拓が爆破したので障害はなくなった。
「その役場に一番近くにいるのは誰です? 皆さんでしょ? 僕も手の内を明かしますが、エダ=ファーロングさん、今ウチの船に来ていますよね? 彼女の代わりにクロベ捜査官が島を出た、それが条件だったみたいですね、ウチの羽山と交わした条件は」
ヘリの音が徐々に大きくなっている。ヘリは上空を旋回しながら島の状況を観察しているようだ。そのためか、村田の口調は早かった。
「余計な取引をしてくれたものだ。彼がいたらよかったのに。捜査官、一先ず役場のほうに向かいましょうか」
そういうと村田は率先して歩き出した。拓も黙って村田の後に続く。
「さて…… 問題はサクラ君ですが、あの子はまず出てこない。状況を知ったら余計に、でしょうね。そしてそれが一番賢い選択です。そして僕の願いはゲームを最後まで遣り遂げる事です」
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