第1章

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「ですが終了時間が今日の正午という点は変わりなし、つまり捜査官たちにとって30分得するわけですね」  拓は銃を構えた。村田にではなく、住宅地上を旋回するヘリに銃口を向けた。 「で、もう一つは?」 「僕たちのほうが先にあの連中に手を出しましょう。僕たちがリアルに殺しあうのを見れば、疑念を少しは晴らしてくれますか?」そういうと、村田は拓が背中に背負っている武器の入ったバッグを指差した。「その証明はすぐにでも行います。武器を下さい」 「さっきのワルサーP99があるだろう」 「僕はジェームズ・ボンドでもデューク東郷でもクロベ捜査官でもないから、ハンドガンでヘリに挑んで勝ち目があるとは思っていませんよ」 「…………」  拓は一瞬躊躇したが、バッグの中からソウドオフショットガンを取り出し村田に投げた。村田はやや不満気にそれを受け取る。続けて12Gのダブルオー弾8発を投げて渡した。拳銃よりは威力はあるがショットガンは近接武器だ。そして撃つためのアクションも大きい。もし村田が打って変わって拓を襲おうとしても動作でバレるだろう。拓はそれを計算してショットガンを渡した。 村田は苦笑し受け取ると駆け出した。そして駆けながら無線機を取り出しヘリを迎撃するシフトを命じた。拓にも聞かせるよう日本語だった。  二人は紫条家の森の中にある地下通路に入り、すぐに住宅地の秘密通路から出た。  住宅地はサクラが大爆発で吹っ飛ばした。二人が出てきたのはヘリ側もすぐに見つけた。飛び出て10mも走らぬ内にヘリから自動小銃の弾が襲い掛かった。しかし距離ありヘリの機上からだから命中率はよくない。拓と村田はそれぞれ物陰に入った。  この距離ではショットガンは射程距離外だ。村田も素人ではない。無意味に発砲したりはしない。村田は焦る様子もなく、持っていた無線機を拓に投げ渡した。 「周波数はこのままで。すぐに連絡します。では、ちょっと見物していてください。捜査官たちは…… そうですね。現状を皆に説明したらいいでしょう」  そういうと村田は物陰に隠れたまま駆け出そうとして、思い出したように足を止め、振り返った。 「どうせ無事ゲームが終われば米国政府が事件を回収するんです。検疫だってあるだろうしいっそ核兵器の事は言ったほうが話が早いと思いますよ? 何でしたら僕の口から言ってもいいですし。じゃあ、僕の戦いでも見ていて下さい」
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