第1章

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 親切なのか性分なのか…… 村田は笑顔でそう忠告を残し、ヘリに向かって駆けていった。  僅か1分後には、<死神>もどこからか現れ、ヘリとの交戦が始まった。 紫ノ上島 <煉獄> 午前10時19分  「なんや? 手ぶらカイ、サクラよ」 「手ぶらで帰ってくる以外できんかったんじゃい」  サクラは面白くなさそうに吐き捨てる。飛鳥と宮村は、ずっとこの<煉獄>にいた。もちろん村田の放送は聞いていた。  拓と村田の会話を、サクラはごく近くで聞いていたし住宅地で二人が別れるところまで尾行もしていた。最大能力で<非認識化>を使い上空から監視していたからまず気付かれていない。  話を聞いていて、重大な事が分かった。  核兵器強奪を派遣したのは、村田の組織のはずだ。そして何かしらセンサーのようなものが水素爆弾収納室に設置されていた。村田以外他に知りようがないし、ヘリはクラウディア号から発進したという事はセシル経由で確認した。 「つまり、またあの村田は引っ掛けようとしているワケだ」 「でも銃撃戦は事実よ」と宮村。  数分前から、激しい銃撃の音が<煉獄>で待機していた飛鳥たちも聞こえている。サクラも戻りながら様子を見ていたが、少なくとも襲撃者たちは本気で応戦していた。 「話のカンジだと、村田がひっかけようとしているのはあたしたちや拓ちんではないっぽい。これまで村田は運営側の人間で、奴らの組織に守られている駒だと思っていたけど、違うみたい。あいつはあいつで誰かと繋がっている」  そう言いながらサクラは<煉獄>の瓦礫の中に隠した武器の詰まったバッグを引っ張り出した。 「当分は…… あたしたちは自衛するしかない。ミヤムーも防弾チョッキを二重に着て、武装して」 「大丈夫。もうしっかり着とる!」ドヤっと威張る飛鳥。飛鳥はさらに上をいく三枚重ねだ。「いや、お前が着てどーする! バリアーあるのに!!」と突っ込むサクラ。 「拓ちんの話からすると<死神>は撃ってこないかもしれない。どうせアンタらが撃っても当たらないんだから、撃たれるまでは撃ち返さないほうがいい。基本飛鳥とミヤムーは隠れている事」  武器は自動小銃のM4カービンが二丁、HKMP5Kが一丁、拳銃や爆弾はある……だが武装した集団と渡り合えるわけではない。  ……あたしたちが核兵器を持っているっていう事だけが強みね……
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