プロローグ・ザボーダーライン

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─────この程度か… 私は肥大化させた青魚か古い魚類の様な異形を象る海棲生物の個体を一匹、 そいつが逃げ延びようとする動きごと狙いを定め、 伸縮複合関節の伸ばし、推進し伸びた右腕部が搭載する単分子刃ブレードの爪で、岩礁に磔にする様な形で群の残存数の最後の一体であるメガロ級の腹部から背部を、 まるで銛で一刺しにするが如く貫く。 数十分間で群が殲滅してから、程なくしてウォルから通信が届く。 「状況終了よ。“ウォルバー・ハイル准佐”」 『はりきり過ぎだ“レニゼット・ゼーレフ大尉”。もう少し待つべきだっただろう』 「何を?どこがはりきり過ぎ?」 思えば私の発言が刺々しかったかもしれないが、 にしてもこの時のウォルの言い方もなんだか焦っている様に聞こえた。 「いつもと同じ戦況よ。文句も言い訳もあるなら後でゆったり聞いてあげるけどね、今そういう作戦行動云々の話をするなら、あたしはいつでも上と相談してこの船降りるから」 『その”上の命令”だから俺たちが配備先に選ばれたんじゃないのか?』 といつもなら引っ込むはずが、何故か今回は噛みつく様な言葉を投げかけるウォルが、 薄っすら心境の焦りが垣間見えたかに思えたが、 この時の私は、それすら見逃していた。 『お前が簡単にメガロ級に撃破されるとは思わない。だがな、もう少し足止めしていれば…』 「”キャンサー”だったかしら?そんな得体の知れない連中が簡単にこっちの作戦に同意するなんて、考え甘いにも程があるんじゃない?」 『それでもッ…』 とウォルが言葉を投げようとしたその時だった。 アラートのサインがコックピットのディスプレイに表示され… 『シェルド01へ通達!緊急事態発生!哨戒中の偵察隊から報告で…うぁあぁッ!!』 私のコールサインを呼んだその悲鳴がスピーカーから聞こえ、 センサーを振り向かせると、鈍く海中を響き聞こえる爆発音と咆吼。 深海活動仕様ではないとはいえ、 海中の潜航という高圧環境の活動に特化したシェルの分厚い装甲でさえ、そのエコーは反響していた。 更に瞬発的に私が目を疑ったのは、コックピット部ごと貫通しシェルの装甲に空いた口径の大きい穴である。 『上です!隊長!!』 斜め上部から袈裟斬りの如く私のシェルに向けて叩きつけられる“硬質”。
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