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“速い”
それも自動照準で水中機銃から放たれたダーツ弾の弾幕の軌道を掻い潜るほどの速度である。
無論メガロ級とて鱗は硬質である。
その上流れ弾が切る掠り傷なら数分間のレベルで再構築される。
が、幾ら速かろうとも、鱗の硬度が高かろうとも、ましてや治癒再生能力が早かろうとも、この数の弾幕では“頭部”が吹き飛んでもおかしくない。
私の対クラーケ戦の過去に至る戦闘経験は瞬時にそう解釈した。
しかし、ほんの数十秒でさっきまでの“青魚”とのフォルムとその大きさ差異に、
自分の瞬発的な戦闘経験がはじき出した結論の浅はかさに辛酸をなめる事になった。
『退避だ!大尉!“セミヒュージ級”だ!!』
“中級大型<セミヒュージ>クラーケ”
全長にして28.5mとシェルの倍以上の大きさ…
“いや、これは大きさというモノの問題じゃない”と一目そのクラーケを見た瞬間に私は察する。
確かにあの青魚共の一体を更に拡大したようなものには近い。
だがそれ以前にあのセミヒュージ級は航行の直進速度を上げるためか、古代の甲冑魚の様に頭部の部位が“外骨格”の様に硬化している上、その身に受ける水圧及び水流を貫き引き裂く大型の“角”が生えていたのである。
私の部隊はこの角のセミヒュージ級の脅威の戦闘能力に煽られた。
私と後衛部隊は弾倉に予め込められた通常魚雷と拡散流線ダーツ弾を発射したが、奴は大柄な外骨格とその硬質な角で弾きものともせず、
指令系統を率いる私を護衛すべく前へと立ち塞がる前衛部隊が、次々奴の角の餌食になっていく。
一見母艦からのウォルの援護も要請すべきか、という見当も見られるが、
数こそ少なくなってきているものの、
潜水艦による長遠距離からの大型魚雷を含む対潜兵器の使用は危険である。
捜索システムの誤作動が、
これだけの僅かに激しい海流の熱に加えて
ましてやネイヴォーガのジェネレーターが多数密集しているこの局面では引き起こされるので、危うい事は言うまでもない。
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