プロローグ・ザボーダーライン

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どこから話すべきか… そう、これ長きに渡り年月がたった遥か未来の時代の話。 想定するように、刻々と悪化する地球の温暖化に伴う海域の上昇に対して その頃の人類も未だに根本的な対応策を見出せずにいた。 陸地を海底に浸食され、人類は次第に居住地を失っていったその果てに… 自らその生活環境を、“海域”へと開拓を余儀なくされた。 比率にして地球の約9割 海域に陸地を浸食され失った頃のその時代の“始まり”を 我々は ≪水域浸食世紀〈ウォーターバースト〉≫ そして≪海世歴≫と年号を改め呼称し、 人類は海域の増大で失った居住地を、 人工海域都市≪フォート≫の増設により補っていた。 だが、無謀に海上及び海底に生活環境を増やすという考えは、フォートの唯一の欠点である、損害状況を含む構造の脆さと、 我々人類の決定的な性から生まれる“ある問題”は そう簡単に人類を救うとは限らず、 それどころか我々人類自身の存亡の首を絞める事となる。 フォートを保有し維持に関わる“争奪戦”という、一つの“大きな戦争”が起きたのだ。 そしてその果てに、 人類は愚かにも世界規模の核戦争化へ肥大化した第三次世界大戦が起きて更に数年後、 人類はもう一つの大きな難問を抱える羽目になり、 戦争を終結し、各国家群は結託する。 核戦争が引き起こした海域の放射能汚染による突然変異から生まれた ≪クラーケ≫と呼称する異形の“怪物”出現と その戦いの時代の幕開けである。 個体差あれど、 クラーケは一属一個体が対艦仕様の軍用潜水艇及び特殊潜航艇並の戦闘能力を有する為、 重巡洋艦と戦艦で構成された迎撃艦隊による防衛をもってしてもフォートを破壊される事件や事故は後を絶たず、 個体によっては一体のみで原子力潜水艦に匹敵する≪ヒュージクラーケ≫と呼ばれる部類も存在したという。 これに伴い、我々人類は対クラーケ駆逐戦に特化した軍用特殊潜航機動兵器≪海軍鬼兵〈ネイヴォーガ〉≫の開発に着手する事となり、 そして、≪海世歴1250年≫ クラーケの出現という問題から千年余り経ち、国家の大半以上にネイヴォーガが普及した遥か未来の時代より、この物語は始まる。
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