プロローグ・ザボーダーライン

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――――――クラーケ出現のスクランブルのサイレンが鳴り、私達の仕事は始まる。 アフリカ大陸の最南端フォートである≪アガラスフォート≫へ向かう道すがら、 国家複合連盟平和維持軍南米支部の第1066遊撃警備海兵部隊に属していた私達は、ダイバースーツにも似たヘルメットとパイロットスーツを着込み、 南大西洋を潜航中にあったイオンプラズマ動力炉の潜水艦“ヒードラ”のドッグ内に待機していた。 縦に奥行きのあるドーム状のドッグに並ぶ約三十数機の潜航機動兵器であるネイヴォーガの汎用量産機、≪シェル≫が、ヒードラの動力炉と結ぶEP〈エナジープロバイド〉ケーブルに繋がれ私達を待ち構える。 機体の体高にして18.5mの厳つい体格だが、 遠目から見れば若干愛嬌はあるかもしれない。 これでも試作機の開発に着手したばかりの頃は、 “頭”や“首”と言える部位も在ったらしいが、今ではその設計からは欠片も面影は無い。 換装形式型のメインウェポンである両腕部と 潜水航行用として開発された推進力システムであるスクリューブースターを搭載する両脚部が存在する点においては、 SFモノの架空ストーリー戦争メカフリーク共がよく知る機動兵器の様に “四肢”の存在する機動兵器だ、 が、胴部と頭部は“一部分”の部位として設計されたこの機体は、まるで場末の広告のマスコットキャラクターの様な2頭身というシルエットでロールアウトされていた。 それもその筈、水中潜航に伴う耐水性と耐高圧環境での戦闘性を兼ね備えるにあたって、装甲強度と推進力の強化を追及する余り、必然的にコックピットと動力ユニット及びセンサーユニットは一部分に集約されたフォルムへと“変質”していったのである。 軍事フリークで今は整備兵として働く私の知り合いが、 私達の時代で流行った何かの二次元サブカルチャーのセリフの如く、 “頭なんて飾り”とか解説していた記憶があるが、まぁそんな事はさて置き…。
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