プロローグ・ザボーダーライン

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「各自個体データを機体に読み込み戦闘配備。整備兵!対象の規模と規格は?」 「“メガロ”級の群と想定されます、ゼーレフ大尉。」 「前衛隊各機にブレードを装備させて。私の機体はブレードとランチャーで出る」 メガロ級とは、名称含め古代生物の大型肉食魚類のシルエットと大きさに被り、 その個体のクラーケは群で活動する部類である。 大きさもシェルよりも若干“小型”である為 その群だとしたら私の属する部隊でも充分に分があるが、 これがもし“大型”のヒュージクラーケであったならあまり冗談は通じない。 それが私達の住む世界。 が、想定された事態は、思っていた想定よりも前者だ と、この時の私は信じきっていた。 “一体一体の戦闘能力なら兎も角” 私はこの時までは“過信”していたかもしれない。 格闘戦用として一基分で鋭利さに特化した長い二枚刃の爪の腕部を装備したシェル部隊が半数、残り半数の後衛支援部隊のシェル部隊には汎用回転弾倉ランチャーを搭載した腕部を二基換装させ、私は指揮官専用機として調整された機体に爪の腕とランチャーの腕を一基ずつ装備させ乗り込む。 ―と機体の動作システムが完全起動するまでの間際だった。 CIC回線の通信が私の機体に届く。 『“レン”、お前今度は何した?』 とニックネームで呼び問いかける辺り、通信はヒードラ副艦長にして私の士官学校時代の同期の男である。 敢えてこれだけはっきり言っておく。 私の部隊の配属先が “偶然”このヒードラと呼称される国複連の遊撃潜航艦になり、 “偶然”に組まされる訳であったが、 私からしてみれば金魚の糞の様に付きまとわれるやり取りは、むしろ向こうの方だ。 デスクワークが私より長けているおかげで出世頭じゃ、多少私にとって都合の良い後ろ盾だが、 “腐れ縁” そう、ただの腐れ縁の酒飲み仲間である。 「すっ呆けたセリフ言っているなら哨戒機のデータ寄越しなさいよ。 あたし達“今まさに結構”修羅場って解っているの?」 『“すっ呆けている”?“修羅場”?生憎哨戒機の情報じゃ目標地点到達まで未だ17分は在る。 “米国本部から通達なんだがな… クズル機関の特務機体の配備の話、”蹴った”そうじゃないか』
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