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『前衛部隊、続け!』
案の定メガロ級クラーケの群は統率を失い、
隠れていた岩礁から飛び出してきた単分子ブレードの”爪”を装備した残り半数のシェルがレンの機体を先頭にして、
メガロ級のクラーケに一斉に斬りかかり、
群達は流血とともに腹部を裂かれ、頭を刺突され、
奴らは混乱に乗じてその数は減っていく。
一部始終の“中盤”を、管制ブリッジの回線越しに間近でそれが確認出来て、深刻な心境でこそあれど、その胸の内で俺は本当に幸運だったかもしれない。
でも士官学校に通っていた頃から思う。
特殊潜航艇としてのネイヴォーガのパイロットになり、
クラーケから人々を守り、海域を切り拓く事を望んだ彼女の目は輝いており、そんな彼女に多分俺は”少し”以上に好意を抱いていたのも本心だ。
だがそれと同時に彼女がいつしかクラーケとの戦闘で、その鉄の魔物は彼女の棺桶になって運ばれて自分の前に現れるのだろうか…という言い知れない不安を抱えていたのも本当だ。
30機以上のネイヴォーガ隊を率いるその中でも、
確かに彼女の戦いぶりは活き活きしてはいる。
が、それでもその胸裏で、実は前線部隊で戦うレンに、そんな惨めな形の死が訪れるのが、
この時も俺は少しだけ怖かった。
この南大西洋の危険海域で、俺のヒードラと彼女の遊撃ネイヴォーガ隊の戦果が名を挙げたこの頃、あの特務機関からの特機導入の話が来た時、
彼女に対して情けない話かもしれないが、
この話に対して、
“こっそり受理した”のは俺だ。
“胡散臭い”。
“俄かに黒くない話ではない”。
彼女からそんな言葉を浴びせられたとしても、
俺はもし望めるなら、俺なりのやり方で彼女を守る措置を“選択した”
否、もとい“選択したかった”のかもしれない…。
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