番外編・彼女のなまえ

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「ああ、構わない。部屋に来てくれるか」 「休憩中にすみません。瑞姫ちゃん、 先に戻っていて」 ファイルを持っていて良かった。 もちろん決裁書類なんてデタラメだ。 わたしの行動に瑞姫ちゃんは驚いている だろうけれど、頭の良い彼女はきっと上手く 合わせてくれる。 「了解です。大田さんはこんな所で何してるの? もうすぐ昼休みが終わるわよ。一緒に戻ろうか」 「え、でも……」 「さ、行くわよ」 さすが瑞姫ちゃんは察しが良い。 有無を言わさず大田さんを引っ張って 行ってしまった。 二人が階段を下りて、完全に見えなくなり、 残ったわたし達は目を合わせる。 「いいところに通りかかってくれた。 助かったよはな。俺達も行こうか」 「いえ、書類の事は嘘で……」 支社長室に向かって歩き出す直彦さんの 背中に、もごもごと呟く。 「……」 そんなわたしを振り返りってジッと見た直彦さん。 周囲を見渡した彼は、おもむろに手を取って さっき出てきたばかりの資料室に、わたしを 押し込んだ。
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