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「嘘って、どういう事?」
資料室に入るなりドアに押し付けられ、
彼に圧し掛かるように見下ろされる。
いつもの別れ際と同じシチュエーション。
けれど、会社で、それも資料室というのが
どこか背徳感を感じさせた。
すっかり見慣れた彼の顔を、なんだか
照れくさくてまともに見るのが難しい。
「ご、ごめんなさい。偶然大田さんとの話を
立ち聞きして。彼女を追い払うために……」
「書類をでっち上げた?」
「ええ。だって、彼女が勝手な事を
言ってあなたを困らせるから」
隠しても仕方がない。正直に打ち明けた。
「そうか、聞いてたんだな。知ったら君が
悩むかと思って、黙っていたんだけど」
しょうがないな、という感じで笑う直彦さん。
「ごめんなさい。わたしがギリギリまで内緒に
したいと言ったから、あなたを面倒な目に
遭わせてしまって」
「いや、彼女にはここに来た当初から
付き纏われていたよ。はっきり言葉に
されたのは昨日だけどね」
「そんなに前から!?」
さらっと爆弾を落とされ、思わず大きな声を
出してしまった。
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