番外編・彼女のなまえ

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愛する人を奪われるのは、もうこりごりだ。 なんで公表を遅らせたいと言って しまったんだろう。 意地悪されることには慣れているのに。 「いや、あと数日だ。予定通りでいこう。 心配いらないよ、ボディガードを付ける」 「ボディガード?」 「そうだ、大丈夫。最強の人物だから」 「直彦さんがそう言うなら……」 その言葉を信じて、それぞれの部署に別れた。 _____ ___ 「佐伯君、この契約についての 資料はどれかな?」 「どれですか?ああ、B社の。それでしたら こちらです。今データを送ります」 「ありがとう」 「……」 カタカタとキーボードを打つ音が 狭い部屋に響いている。 翌日、課長から手伝いをするように 言い渡され、朝から支社長室で直彦さんと 二人きり。 と言っても、ドアは開け放たれているけれど。 時折決済を取りに来る課長以外、部屋に入る 人は無く、一緒に昼食を取りに行っても、 誰一人気にする様子はなかった。 「あの……もしかしてボディガードって、 わたしの事だったりします?」 「そうだよ、これ以上の適任はいないだろう?」 小声で聞いたわたしの問いに、書類に目を 落としたまま、平然と彼が答える。
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