第1章

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眼鏡屋さんで銀縁眼鏡を見つけると試してみたくなる。 その時、流れてくるピアノの音色は、先生が作ったその日の色。 気分次第で曲調も眼鏡も変わる。 蜻蛉の眼鏡みたい。 私がからかったら、 似合うものを探している。 そう言ったけど銀縁眼鏡が好き。 私の身体が音を覚えていて勝手にメロディを口ずさんでいる。 最後にくれたクリスマスソングは今でも耳から離れない。 魔が差した額への軽い口付けは先生には遊びかな。 あれはあれで今でも胸が張り裂けそう。 今も先生はどこかでピアノを弾いているんだろうか。先生に会いたくてしかたない。転勤したときくれた眼鏡は眼鏡ケースの中にある。 私が見上げた空からは今年も雪がちらついた。 先生が奏でる旋律を探す私の青春は眼鏡色に染まっている。
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