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突然開けた異世界を呆然と眺める。薔薇園のアーチやギリシャ風のガゼボ、青銅色の長椅子やテーブルが設置され、庭園の中央には大きな噴水、ギリシャ彫刻の女神が肩に水桶を抱え、そこから水が溢れ出ていた。
「有朋さん」
中二階の手摺から、和服姿の中年女性が手を振っている。有朋は女性に向かって軽く手を上げ、背中越しにぼそりと呟いた。
「伯母の相楽百合子だ。彼女の相手は任せた」
白い布が掛けられた丸いテーブルの中央には、華やかなアレンジの花篭が飾られている。そこに目元の涼しい和風美人が上品に座っていた。髪を結い上げ、薄い色の入った縁なし眼鏡を掛けている。高級そうな着物はモダン柄で、和服なのに現代的な印象を与えていた。
「お久しぶりです。百合子伯母さん」
有朋は作り笑顔を口元に貼り付け頭を下げた。
「本当よ。修司さんも祥子も、忙しいの一点張りで顔も出さないんだから。薄情な人達ね」
百合子はなじるように有朋に言う。
「同感です」
「ねえ、病院経営ってそんなに大変なの?手広くやりすぎなんじゃない」
「さあ、僕には」
黒い蝶ネクタイをしたウェイターが足音もなくやってきて、有朋の椅子を引いた。彼は流れるように腰を下ろした。
「あなたはどうするの?病院の跡を継ぐの?」
「先のことなので、まだ考えていません」
有朋は苦笑した。
「先ですって?そんなことではいけませんよ、あなた」
そこでようやく公平の存在に気付き、話を止め、長身を見上げる。
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