アルテミスホテル 1

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「あら、こちらは?」 公平は場の雰囲気と、百合子の饒舌に飲まれてぽかんとしていたが、ウェイターに促され、頭を下げて慌てて椅子に座った。その様子を見ながら、有朋は僅かに口元を上げた。 「友人の樋口公平です」  百合子は珍しいものでも見るように公平を観察した。 「はじめまして。樋口公平です」  公平は引きつった笑顔で挨拶をした。 「お友達?まあ、素敵。有朋さんにも友達がいて安心したわ」 百合子は口に手をあてて嬉しそうに顔をほころばせた。  公平が有朋に視線を送ると、彼はへの字口で肩を竦めた。 「背が高いのね。何センチあるの?」 「あ、はい。百八十三センチです」 「そう。髪はなぜ伸ばしてるの?」 「伸ばしているというか、伸びたが正しいんですが」  公平は頬に掛かった髪を指で摘まんだ。 「柔らかそうな髪ね。あなたによく似合ってる。あっ、そうだわ」 百合子は思いついたようにハンドバックを取り出し、中から小さな紙片を取り出した。公平の目の前に名刺を差し出す。相楽着物学院、校長相楽百合子。 「公平君、あなた着物モデルやってみない?」
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