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綿貫倫子は書き終わった業務日誌を閉じた。
壁に掛かった時計を見上げれば、もう七時を回っている。
「さあ、帰ろうかな」
ひとりごちて事務机から立ち上がった。
「お疲れ様でした」
事務所に残っていたスタッフ数名に声を掛けて、彼女はガラス戸を開けて外へ出た。
首筋を通り抜ける冷たい風に思わず身を竦め、倫子は手編みのマフラーを巻き直す。「まごころサービスセンター」は家事代行サービスの会社で、忙しい家人に代わって、炊事、掃除、洗濯、買い物、ペットの散歩など、身の回りのあらゆる事を代行している。
倫子は自転車を走らせながら、午前中に行った藤村家での会話を思い出していた。
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