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おはようと挨拶からはじまる一日は、いつもより緊張していた。
ちゃんと自分の気持ちを伝える。
決めたから。
朝礼前の8時過ぎ。彼はこの時間に登校する。
きた、きた。
体育館裏は汚いから嫌だな。階段の踊り場にしよう。3階と4階のあいだ。あいまいだから、いい。どちらでもない感じが、好き。
気持ちを言葉にするのって、こんなに難しかったっけ。
好きです。
大好きです。
彼は驚いたように目をぱちくりさせる。顔を真っ赤にして。小さな声で。
「ありがとうございます」
彼らしい言葉。踊り場みたいな言葉。
これで、いい。ちょっと進歩。
彼が、手を差し伸べてくる。私もゆっくり、近づける。
「痛くないですか?」
手をつなぐだけ。それで私たちは大変だ。ちょっと変な感じになる。
優しくつながれた手が、ずっとこうであればいいのにというように離れない。
困っちゃうなあ。
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