第十六章 破滅へ導く救いの手

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ーーー☆ーーー 『アトランティス』外周部、北西地点。 蒼炎くるみたち志願兵に立ち塞がるのは新生反乱軍のトップである諸星凛花。長い黒髪を起点に人間を支配する魔法の使い手。 「くふふ☆」 志願兵に協力関係を築けるほどの繋がりはない。 それぞれがそれぞれの目的のために戦争へ参加する……つまり手柄を取り合うライバルであるのだから、最悪足を引っ張り合うことさえあり得る。 そんなバラバラの集団へ単一の思考で統一された魔法使いたちが襲いかかる。目的と手段の変質。正しく目的のために戦っているはずなのに、手段が諸星凛花の都合がいいものとなって出力される。 「チッ。チャイナ! 道を!!」 「はいはい」 チャイナ服の女が青龍刀を抜き放つ。刃に炎が纏わりつく。敵対者。ボブカットの魔法使いがサイコキネシスにも似た魔法で放った土の津波を灼熱の赤で斬り裂く。僅かな亀裂。ほんの少しの隙間をこじ開ける。 「きゃは☆」 蒼炎くるみが駆け抜ける。 チャイナ服の女がこじ開けた亀裂へと体を潜り込ませ、土の津波を通り抜け、ボブカットの女へと肉薄する。 「馬鹿め! そこは我が領域である!! 内部より肉体を弾け飛ばしてくれる!!」 サイコキネシスにも似た魔法の射程内。 蒼炎くるみの骨や肉を支配し、動かし、爆散させる……はずの魔法は蒼き炎となって消えていった。 「へ?」 『蒼炎』。 触れた生命由来を消費して、蒼き炎を具現した蒼炎くるみがボブカットの魔法使いの懐深くへ飛び込む。その指先を彼女の額へ押し当てる。 「最強魔法使い蒼炎くるみ様に勝てるわけないでしょ」 『蒼炎』がボブカットの魔法使いを呑み込む。 その命を燃やし尽くす。 だが、敵は彼女だけではない。その犠牲をシステマチックに使い潰す。駒を破壊されることを前提に蒼炎くるみたち志願兵を殲滅する意思が蔓延していた。 ゴバァッ!! と四方からの魔法を『蒼炎』具現の餌にしながらも、蒼炎くるみは敵の中核を見据えていた。 諸星凛花。 悪趣味な戦闘を構築する源。 「ぶっ殺してやる」 邪魔な障害を薙ぎ払い、『蒼炎』を纏いし銀のツインテールの少女が黒髪の女へ向けて駆け出す。
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