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「わたくしを狙うのが常套手段ではあるだろーけど」
黒髪の女が嘯く。
引き裂くように笑う。
「新生反乱軍を統べるわたくしに勝てると思うこと自体が不敬であろーよ」
ザワザワと地面に垂れていた黒髪が蠢く。
土を支配する。
ゴボゴボゴボォッ!! と諸星凛花の周囲の地面が変貌する。数十メートルクラスの大蛇、それも八匹にも及ぶ土くれの塊が蒼炎くるみへ向けて襲いかかる。
「蒼き魔法の無効化範囲は魔法『のみ』であることは分析済みだってーの」
「チッ!!」
正確には生命由来が範囲なのだが、土くれの魔法を『蒼炎』で破れないことに変わりはない。
(先の攻防でアタシの『蒼炎』の特徴を見破ったって? アタシが諸星凛花に挑む構図まで予測できていたなんてわけじゃないとしたら……あの女数千人規模の戦闘のすべてを分析しているわけ!?)
土くれの大蛇が迫る。
魔法による支配は『蒼炎』で燃やし尽くせるだろうが、支配されていた土くれの塊がなだれ込んでくるのは厄介だ。『蒼炎』は彼女の必殺魔法である。それだけ全力の魔法なのだ。他の魔法を併用することは不可能だし、他の魔法へ切り替えるのにもある程度の時間が必要である。
だから。
「チャイナァ!!」
叫んで、そして背後で轟音が炸裂した。
何かが落ちた。『アトランティス』の中心にしてシンボルである鮮血姫城から飛来してきた何かが。
そして破滅が炸裂した。
蒼炎くるみの背中へと何かが放たれた。
反射的にボブカットの魔法使いたちの魔法を利用して具現しておいた『蒼炎』をぶつけようとして……慌てて全身に纏っていた『蒼炎』を解除する。
蒼き炎が霧散して。
蒼炎くるみは赤い液体を撒き散らしながら飛んできた何かを受け止める。
「チャイナ!?」
チャイナ服の女。
青龍刀はへし折れ、全身から赤黒い液体を噴き出す彼女はすでに意識さえ保つことができていなかった。何とか生きているという有り様だった。
あの一瞬。
『アトランティス』から飛来してきた何かが着弾した瞬間に勝敗は決した。
「何が……っ!?」
そして、その原因を特定する暇もなかった。
土くれの大蛇が殺到する。チャイナ服の女を殺さないために『蒼炎』を解除したことで丸裸となった蒼炎くるみへと。
激震が轟く。
単純な質量による暴虐が炸裂する。
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