第十六章 破滅へ導く救いの手

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ーーー☆ーーー 大質量の一撃。数十メートルクラスの大蛇による八方向同時攻撃。圧し潰すという現象を極限まで突き詰めた猛威は敵対者を確実に圧殺する。 そんな当たり前を奇跡が崩す。 蒼炎くるみの灼熱の爪が正面から迫り来る大蛇を切り裂き、抉り、ぶち抜き、新生反乱軍の女王目掛けて猛進していく。 「きゃは☆」 チャイナ服の女を右肩に担ぎ、左手の指先から噴き出すように灼熱の爪を生やし、銀のツインテールの少女は笑う。 笑って、灼熱の爪を突きつけ───ゴバァッ!! と解けるように膨れ上がった灼熱の赤が濁流のような勢いで諸星凛花へと放たれる!! 「終わりよ!!」 「くふふ☆」 そして。 そして。 そして。 蒼炎くるみを食いそびれた土くれの大蛇が動く。蒼炎くるみを追い越し、諸星凛花の盾になり、そして天空より降り注いだ黄金の閃光を浴びて、その性質を変質させた。 白にも黒にも見える硬質な物体。 すなわち魔石へと。 「っ!?」 魔石の吸収効率は悪い。 受けた魔力を全部吸収できるわけではない。 だから灼熱の赤は魔石を破壊する。できる。 だが、魔石は魔力を吸収する。いくら吸収効率が悪いとはいえ、あれだけの大質量を用意すれば……、 「くふふ☆ 魔石を作り出すとは反乱勢力もやるじゃねーの」 埃でも振り払うような動作だった。 片手を振るっただけだった。 それだけで灼熱の赤……火の粉のようなものが吹き散らされた。それほどまでに減衰していた。 そこで。 後方から響く声が。 「痛つつ。くそが。魔法という叡智を得ていながら物理で殴るなんて原始的なものにしか利用できない筋肉馬鹿に泥を塗られるなんてね。ここの片付けたら、我が叡智の光にて消し飛ばしてやる」 振り返り、それが蒼炎くるみの目に入る。 頬を陥没させ、全身から血を噴き出す女が。 ぐぢゅべちゅ、と『組み替えられるように』負傷が消えていく様子が。 『バスターレヴィ』のトップ。 分子の性質を変える錬金術の使い手。 安城逸見。 「チッ。どこぞの馬鹿なら喚きながら逃げる算段組み立てる状況ね」 適当に吐き捨て、灼熱の爪を噴き出す。 口元を好戦的に歪め、ピンチだからこそ、咆哮を轟かせる。 「ちゃちゃっとぶっ潰してやるからさっさとかかってきなさいっ!!」
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