第十六章 破滅へ導く救いの手

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ーーー☆ーーー 虚空魔法。 その性質は対象を異空間へ放り込む……だけではない。ある意味において、もう一つの効果のほうが本領であるかもしれない。 対象の永久保存。 対象を放り込んだ時のまま保持する性質こそが虚空魔法の真髄である。 つまり、 ぐにゅり、と空間が揺らいだかと思った時にはすでに無数の魔法が解き放たれていた。そう、開戦の合図となった統一政府による一斉攻撃の一部を排出したのだ。 虚空魔法の真髄。 それは取り込んだ対象を任意のタイミングで射出することである。あらゆる対象を、時間の経過による減衰なしに、自分の手札へと変える魔法。 「っ!?」 数千もの魔法が殺到した。一撃一撃は東雲幻水や黄昏虚にとっては大したものではなかったかもしれない。だが、圧倒的物量が力となる。力の差を覆す。 「しゃらくせえ!!」 「馬鹿……っ!!」 遅かった。 黄昏虚が警告する前に東雲幻水はその拳を限界突破によって強化し、数千もの魔法の群れへ叩きつけた。 ドグシャアッッッ!!!! という轟音がどこまでも響き渡る。東雲幻水の拳と数千もの魔法が混ざり合って莫大な光の渦と化した一撃が拮抗する。何とか、ギリギリ、受け止めることができた。 ───最悪の展開だった。 「ねえ幻水ちゃん! 奴のストックはまだまだあるんだよ!? だっていうのに、敵さんの魔法を真っ向から受けたら、そこが限界だったら、次の一撃をどう凌ぐっていうのよお!!」 「あ」 気づくのが遅かった。 単純な暴力に特化した東雲幻水を確実に殺害する悪意が解き放たれる。ぐにゅり、と彼女たちの右手の空間が歪む。そこから放たれるは数千もの魔法。開戦の合図でストックしておいた力の塊。 「神殺しの槍よ!!」 ドバァッッッ!!!! と数千もの魔法を一斉に解き放つことで莫大な光の渦と変貌した一撃が解放される。空間を引き裂くように殺到する純粋な力の猛威へと黄昏虚が具現した『槍』が突き刺さる。 そう。 ぶぢゅり、と光の塊をマシュマロのように突き刺したのだ。
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