第十六章 破滅へ導く救いの手

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びり、ジリ……ッ!! と漆黒の結界魔法が軋む。余波だけで真なる女王の牢獄が悲鳴をあげる。 「ははははは!! やっぱりか。最高だ、おもしれーよ、おめーはよー!! おびき寄せた甲斐があったってものだぜ!!」 相手に声が届かないと知っていながら、真なる女王は内から溢れる歓喜を漏らす。溢れさせる。 「最高の好敵手を使い潰そーかねー!!」 真なる女王と純白の少女。 正反対の魔法使いの『小手調べ』はもうすぐ終わりを迎え……怪物たちの本領が解放される。 ーーー☆ーーー 「脳筋どもめ」 俺は戦争の様子を眺め、思わず吐き捨てていた。 無駄が多すぎる。意味のない戦闘でしかない。 なんで真っ向勝負なんて仕掛けている? 簡単でいい。単純でいい。敵の隙を突いて、それこそ戦闘に発展させることなく降伏させるくらい目指せよ。 無駄な犠牲を払いやがって。 努力する方向を間違いやがって。 「どうする?」 今から『緑の県』にある『アトランティス』まで行くのは不可能。確かこの異空間は『青の県』にあったからな。位置としては西から順に黄、赤、緑、紫、青……と並んでいるんだしよ。単純に考えて日本を七つに切り分けたのが今の『県』だ。『県』が間に一つ挟まっているだけでどれだけの距離が開いていることやら。魔法使いならともかく、男の力じゃたどり着く頃には戦争は終わっている。 いや、そもそも俺があそこに行ったって何もできねえだろうが。 「どうする?」 探せ。 掘り返せ。 見つけ出せ。 くそったれな戦争に頼ることなく世紀末な乱痴気騒ぎを終息させる突破口をこじ開けろ!! ーーー☆ーーー 『それ』の願いは一つ。 原始的な生命の想い。 狂おしいほどの感情が『それ』を急かす。 『……』だから。 『……』になってほしいから。 『それ』は歩を進める。 あらゆる障害物を薙ぎ払い、ただただ原始的な想いに突き動かされた『それ』の目的地は───
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