第十六章 破滅へ導く救いの手

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ーーー☆ーーー 「さて、と」 黒き薔薇が咲き誇る。 ぞるぞるぞるう!! と天空に君臨する『家』の一部を呑み込む。侵食する。次の瞬間には黒き花吹雪が炸裂する。ほどけるように薔薇の花園が崩れる。そう、侵食していた『家』の一部分……一つの町に覆いかぶさるほどの範囲が消失したのだ。 それで一部分。 沖縄を丸々覆い尽くすほどの『家』にとっては角が欠けたようなものだったかもしれない。 ただし。 消失した部分は空中要塞『シャルロット』の女王である北城紫陽花の私室を含んでいたが。 「…………、」 それは消失した区画の代わりに宙に浮かんでいた。上空数千メートルの位置で、環境で、それは悠然と揺蕩っていた。 ふわふわのベッド。 そこに埋まるように寝転がる女の子。 最年少『魔女』が口を開く。 「何の真似?」 「分かっているくせに」 こちらは黒薔薇の姫君。 彼女は黒き薔薇による花吹雪の波に乗ることで上空数千メートルの位置に君臨していた。 黒き渦がもふもふのベッドへと接近する。 向かい合う。 「反乱勢力撃滅作戦は統一政府の総力を挙げての決戦よ。この決戦には私たちの配下を惜しみなく使う必要がある。『表』だろうと『裏』だろうと、出し惜しみをできないように調整しておいた。つまり、統一政府の内乱なんてものを勃発させなくとも、この私の隣に並び立つクソガキをぶっ殺すことができるってわけよ」 普段ならば、双方共に統一政府の戦力を保持している。その状態で殺し合おうものなら、双方の戦力による戦争となる。統一政府という単体最強組織の総力を大きく削ることになる。 だが、今ならば。 『表』も『裏』も惜しみなく放出している現状ならば。 『表』の頂点である東の魔女と『裏』の頂点である黒薔薇の姫君。トップ同士の殺し合いでもって勝敗を決することができる。 「こっちの手札は『裏』だけじゃねーけど」 眠気なまこな女の子が起き上がる。 気の抜けた声音で告げる。 「一対一なら勝てるって考えが気に食わねーし、付き合ってやるでごぜーますよ、アバズレ」 上空数千メートル。 天空の一角にて統一政府を統べる二つの頭が真っ向から喰らい合う。
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