第十六章 破滅へ導く救いの手

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ーーー☆ーーー 統一政府、反乱勢力、新生反乱軍が入り乱れる極大の戦争が勃発した。様々な思惑により誘発された『現在の』最大戦力同士の激突であった。 勝利はどの勢力が手にするのか。 そういう物語であったはずだった。 「……ぁ……」 呻き声が響く。 『アトランティス』外周部、南部地点。 小さな人影は『戦争』を見つめ、進行の邪魔だと判断した。 だから。 だから。 だから。 『それ』は上から下へ軽く手を振った。 ーーー☆ーーー 漆黒の立方体。 真なる女王と純白の少女が激突する戦場。 五感を封じられた程度では止められない怪物たちが正反対の閃光を拳に凝縮する。それは力だ。純粋な暴力を極限まで突き詰めた結果だ。あらゆる障害を粉砕する力を手に、怪物たちが地面を蹴る。一瞬にして距離が詰められ─── バッッッボォ──ッッッ!!!! と。 景色がえぐり取られた。 「……え……?」 姫川楓の右の肘から先が消失していた。『効果範囲』内に入ってしまったが故に。 つまり。 『効果範囲』内に入っていた真なる女王は跡形もなく消失していた。姫川楓と同等かそれ以上の怪物が呆気なく死亡したのだ。 それだけではない。 漆黒の立方体は消しゴムで消したかのように一部が消失していたし、その先も同じだった。 『アトランティス』の南部から北部へ。いいや、その遥か先のすべて。800,000m2以上もある巨大テーマパークを真ん中から引き裂くように、左右に切り分けるように。『アトランティス』の半分以上が消失し、その先の空間も等しく消滅していた。 そう。 それは、つまり、だから、すなわち─── 「蜜、花……ステファニー……?」 先に進んだ友達はどうなった? 「幻水……」 鮮血姫城は『アトランティス』の中心にある。真ん中から切り分けるように発生した『効果範囲』に含まれていた鮮血姫城はもうどこにも存在しない。 「う、あああ……っ」 もういない。 存在しない。 姫川楓の大事なものがその手の中からこぼれ落ちる。そう、過去に両親を失ったように。 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 光があった。 封じられし『何か』が解放された瞬間だった。
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