第十六章 破滅へ導く救いの手

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ーーー☆ーーー 『アトランティス』を左右に引き裂く『効果範囲』。彼女たちはその一撃に呑み込まれていたはずだった。 「よっ、蜜花ちゃん。生きてるかー?」 ルールを改変し、『姫川楓がやっていた高次元に潜る魔法の模倣』を使って九龍蜜花やステファニー=スカイブルー、それに『玄武』の残党を先の一撃から守った女がいなければ。 第零騎士団団長、風波響。 統一政府の『裏』に位置する魔法使いである。 彼女は数十人ほどの団員を侍らせ、旧知の友にでも接するような気軽さで声をかけてきたのだ。 「なんのつもり?」 助けられた側であるはずの九龍蜜花は不機嫌そうに吐き捨ててきた。風波響に付き従っていた数十人の団員の一人であるフルアーマーが噛みつこうとして、片手で制した団長が不敵に笑う。 「元気そうでなにより」 「ふざけやがって。あたしがあんたたちに何をしたか忘れたわけでもないでしょうに」 九龍蜜花は姫川楓を含む大勢をモルガン=ル=フェイの洗脳魔法で支配していた時がある。その中に第零騎士団団長も含まれていた。だというのに、ルールを改変するほどの怪物は笑ってこう言った。 「俺がそんな昔のことを引きずるようなちっせー女なわけねーじゃん」 「……楓の周りには馬鹿が集まるみたいね。そう言われたら、どうすればいいってのよ」 「どうでもいいって流せばいいんだよ。大体あれは俺が弱かったから悪いってだけの話なんだしさ」 力こそすべて。単純な思想の持ち主はつまらないことに拘泥したりしなかった。向かい合うべき問題へ視線を向ける。 「それより……先の一撃を放ってきた誰かさんをどうにかしないとな。ちょっくら手伝ってくれないか?」 「その前に」 九龍蜜花は後ろを振り返っていた。 ガゴン!! と『効果範囲』の外に位置していたために無事だった無人のメリーゴーランドが動き出す。無人であったはずなのに……気がついた時には白馬に誰かが乗っていた。 「はいはーい。悲劇の時間だよー」 『伝説』の存在。 異形の女。 白燐の乙女シルヴィア=リンドフォード。 「やる気満々な敵兵を薙ぎ払っておきましょうか」 直後の出来事だった。 『伝説』が解き放たれた。
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