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ーーー第十二章 主人公、その定義ーーー
「陽香、正座」
「ねえ大和っち。これでも最善手を選択したと自負しているっていうか、全人類を救うほうが大切っていうか、私の命一つで『運命』を粉砕できるなら儲け物っていうか───」
「まだ喚くか?」
「さあ正座しましょうそうしましょう!!」
「お前さあ、普通あんなことするか? 死んで解決とか馬鹿じゃねえの。この小説はナンダカンダで一区切りつく場面ではハッピーエンドを演出するもんだってのに、お前が出てくる時だけ一区切りついてもバッドエンドなんだよ!! くそが。普通な、二択が提示される時ってのは最高にハッピーな結末を導く三つ目の選択肢が出てくるもんなんだよ!! それを、お前は、三つ目が俺の意思を無視して陽香を殺すだと? ばっかじゃねえのっ」
「うう。大和っちには生きていて欲しかったもん」
「俺はお前に生きていて欲しかったんだよ!!」
「う、うるさいばかっ」
「逆ギレかよ!」
「大体どうやったらハッピーエンドになったっていうのよ! 『黒』が定めた物語に隙なんて───」
「まず陽香が知ってる情報を全部俺に伝えます」
「……それで?」
「冷静な思考能力を取り戻す時間的余裕があれば、雪音からのメールが届いた時なんでここまで知ってんだって疑問を持つくらいはできた」
「で?」
「後は雪音とコンタクトを取って自称女神から魔器について聞き出せばハッピーエンドだろうが!!」
「時系列を考えると雪音がメールを送った時には『白』はこの世界から立ち去っているけどね」
「ぐむっ。だ、だからどうしたこの野郎ォー!! お前が死んだのが悪いんだろうがーっ!!」
「逆ギレにもほどがあるわよ!!」
「うるせえ! あんな結末で終わるとか精神衛生上よろしくねえだろうが!! あそこはっ、陽香を取り戻してハッピーエンドでいいだろうが!! あれか、ハーレムモノで特定の誰かを選ぶのはアウトなのか!?」
「ハーレム?」
「ん? あれ、陽香さんや。どうかしましたかい?」
「やっぱりハーレムモノなんだね。あの子はゾッコンだし、怪しい人は何人もいるものね」
「おかしいなあ。今回は俺が責める側なはずなんだがなあ」
「大和っち、正座!!」
「待って待ってこの小説に真っ当なハーレム展開なんて無理だからーっ!!」
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