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「あっさりを受けいれるんだな。てっきり命乞いすると思った」
少女は無表情した少年に無理に笑顔を作って答える。
「交渉をする時点で私達は相手側の都合の悪い存在ですから、覚悟を持たないといけないでしょう? ……もう少し生きたかったです。もう私は困っている人達を助ける事ができないんですね」
「ああ、そうだな。終わりだ」
「最後に本音を話せてよかったです。聞いてくれてありがとうございます」
「……じゃあな」
そう言うと少年は少女に背を向けて出て行った。また静けさが牢内を支配する。少女はまた足元をじっと見始めた。
そして少女の寿命が尽きる死刑決行日。牢の中は静かで尚、日が入らない朝は少し冷え、一層静けさを少女は感じた。
ドアの外から足音が近づき軍服の男が部屋に一人入ってきた。牢の鍵を開けて牢の中の隅で座る少女に冷たい目で見る。
「時間だ」
少女はゆっくり立ち上がり、軍人に近づくと両腕を前に出す。両手首に手錠をかけようとした瞬間、部屋のドアが開き昨日の少年が入ってきた。
「どうした? お前はここの持ち場じゃないだろ?」
少年は軍人の隣へと近づく。
軍人に聞かれたが少年は何も答えず、素早く右腕の拳で男の腹を殴った。軍人は大きく目を見開き、口を大きく開けて苦しそうに息を吐き出した。
「がっ……な、何をする……ん……だ」
「あんたには関係ないだろ」
軍人の声が小さくなり、少年の目の前で膝から倒れた。
「え、ちょっと、これは何です!? あなたは一体……」
状況が読めず混乱してる少女の腕を少年は掴んだ。
「逃げるぞ」
「え、ええ!?」
「俺はユウ。あんたの名前は?」
「私はルドア……です」
「ルドア走るぞ!」
ルドアはユウに腕を引っ張られ地下牢からホールへ、そして国会から出た。外の車が走る傍の歩道を走りながらルドアは聞く。
「ねえ、どこに行くんです!?」
「駅だ。電車に乗ってここから遠くまで行く……ちっ」
平坦な道から先にある電車の線路を邪魔しないよう避けるようにアーチ状となった道の先に、茶髪を逆立てたユウよりもひとまわり身体が大きく筋肉質な男が待ち伏せしていた。
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