第1章

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 僕はようやく手に入れた。苦節一ヶ月。目の前に広げたお札、総額一億円。  きらきらと輝く黄金色に似たお札を眺めてにんまりと笑った僕は、大切にそれをしまいこんだ。こんなことをしているところを誰かに見られたら怪しい人間だと思われてしまう。早くここから出よう。  僕はバイトの制服をカバンに詰め込んで入れ違いで入ってきた同僚に軽く会釈を返しながら、更衣室を後にする。先輩とそれから社員の人にもきちんと挨拶。 「お疲れ様でーす」 「おう、お疲れさん」  うん、僕はいつも通りだ。  さぁ、これでいったい何を買おう?  最新のゲームソフト、マンガのライン買い、アニメのブルーレイボックス。  そんなものだけじゃない。一億円あればもっとすごいものだって買える。僕は頭の中に思い描ける最上級を浮かび上がらせながら、繁華街へと向かう道を歩いていた。  外は真夏の太陽から降り注ぐ熱光線で酷暑の様相。どこかでジュースでも、いや、アイスクリームの店が向こうの通りにあったような。なんでも買えると思うと急に気持ちが大きくなったように色々なものに目移りしてしまう。でもなんでも買っていてはいつかはお金も尽きてしまう。
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