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この日。バイトが終わってから、有岡と牛丼屋へと行った。
夜食を食べながら話を聞いてもらう。
たまにこんな感じで、いろいろと有岡には話を聞いてもらうことがあった。
「この前彼女とのノロケ話聞いたばっかりなのに、何があったんだよ?」
そう言われ、事の顛末を話す。
話を全部聞いた有岡は「そんな女、別れて正解だよ」と、言った。
優しさが重いなんて、意味分からん。
黒岩は確かに優しい。でもその優しさの意味を吐き違えるような女は、お前の彼女として相応しくない。
何処か元彼女に怒っているような。そんな有岡の言葉に俺は救われた。
そして最後に。「じゃあ黒岩も、新人の女に期待だなー」と、意地悪く笑う有岡に、俺は「そうだな」と答えた。
こうして有岡に話を聞いてもらって、一週間が経った。
新人の女はもう店に入っていたが、まだ俺は見たことがなかった。
店に貼ってあるシフト表を見て、その女が「片瀬美羽」と言う名前だけは分かった。
「黒岩ー」
カウンターで作業をしていると、声が掛かった。
顔を上げると孝二がいた。
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