94人が本棚に入れています
本棚に追加
別れを告げられるのは、いつも向こうからだった。
ひとり目の彼女も、ふたり目の彼女も。
そしてさっき別れを告げた3人目の彼女も──。
『優しさが重いの……』
優しさが重いって何だよ…。
皮肉が怒りに変わり、ギリッと奥歯を噛み締める。
彼女のことが好きだから、優しくするのは当然だろ?
買い物に付き合ってた時。荷物を持ってあげたら優しいね、って言ってただろ?
欲しいって言ってた物を、バイトしてお金を貯めてプレゼントしたら、すげー喜んでたよな?
ふたりで遊園地にデートした時。すごく楽しいって笑ってたよな?
何処が間違いだった?何処を間違えた?
間違ってたら教えてくれよ…。ここがダメだって。
そしたら俺、直すからさ……。
『─透(とおる)君。大好きだよっ』
俺に微笑んで、俺に向けられた愛の言葉。
それが彼女の映像と共に、ガラガラと崩れていく。
「それにしても…暑いなぁ…」
ギラギラ照りつける太陽に、ポロリと不満が口から出る。
…考えてても仕方ない。
仮にやり直したいと。話をしに行っても、今までの経験上取り合ってもらえないのも分かっている。
もう…別れたんだ。
「……3講目。始まるな」
時計を見てリュックを背負い、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!