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「──また別れたのかよ」
俺の隣に座る男が、顔をしかめながら言った。
「……うっせ」
吐き捨てるように言い、不機嫌な顔で枝豆を口に放り込んだ。
「ホントお前、同じ理由で別れるよな?何してる訳?」
「…何もしてないっつーの。むしろ俺が聞きたいんだよ」
俺は彼女の為に何でもしていた"つもり"だ。
だけど向こうからすると、何もしてもらっていないと思っていたのだろうか?
ちゃんとしている。と、自己満足していただけだろうか?
「何もしてないのに、なーんでそうなるんだよ?」
男はビールを飲み干し、店員を呼んで「おかわり」と言った。
この男は中田草太(なかた そうた)。高校時代からの親友である。
大学は別々となったが、しょっちゅうふたりで会っては飲み明かしている。
草太は女子顔負けのサラサラの髪質をしている。柔らかい茶色の髪は、つい触ってしまいたくなる程。
可愛い顔立ちに、猫目だがそこまできつくもなく。身長も男からすると低いが、顔立ちの良さと相まって、モテモテ男だった。
本人は身長の低さを気にしているかと思いきや。それが女子受けになると分かっているので、全く気にしていなかった。
見た目草食系男子の癖に、いざ中身を開ければかなりの野獣。
今まで付き合った女の数知れず…。
こいつ程「ロールキャベツ男子」と言う言葉が似合う男はいないだろう。
名前に「草」が付いていることも信じられなかった。
どう考えてもこいつは草じゃない。
いっそのこと「肉太」にでも、改名すればいいと思う。
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