第1章

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リンゴーン 玄関のチャイムがなり、蜜柑が出迎えにいく。 「お待ちしておりました油屋様」 玄関から廊下を渡り、書斎へと案内する。 「お久しぶりですアブさん」 「忙しいなか悪いな」 「全然忙しくないですよ。それよりアブさんこそ海外を飛び回って忙しそうですね」 「こんなもん旅行と同じだ。仕事はちょこっとしかしとらんからな」 お互いの近況報告と他愛もない世間話で軽く挨拶を済ます。ここからが本題だ。 「たー坊や、そろそろ土地の手続きをしようや」 「その前にちょっと話をしてもいいですか」 先日送られてきたエアメールには『〇〇日にそちらへ帰る。わしの日本での財産について話がある。詳しくはついてから話すが、前から言っておった駅前の土地だがお前に譲ることにする。手続きはそちらについた時に行う』 と書いてあった。 前に土地を買ってほしいとアブさんから打診されていたが、ずっと断っていた。 その土地は駅前にあり駅から徒歩3分という好条件なのだが、いかんせん立地が悪い。 その土地は四方をビルに取り囲まれており、駐車場を作るスペースが無いため店舗には向かないし、かといってマンションにするとべらぼうな家賃がかかるため
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